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物価上昇と為替相場の関係性〜ビッグマックの価格からみる為替レート〜

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 今回は、インフレ率と為替レートの関係を見たいと思います。まず、インフレ率について説明した上で、インフレ率の差で為替レートを説明する購買力平価説について解説し、実際にどの程度為替レートと連動しているかを見ます。購買力平価説の詳しい理論的な説明は別稿で行う予定ですが、今回は概観を見た上で、ビックマック指数やiPod指数という購買力平価説に基づく2つの価格指数も取り上げます。更に、為替レートを見る上で長期と短期の区別を付ける重要性を説明します。

インフレ率とは

 インフレ率は“inflation rate”の日本語訳で、要するに「インフレーションが進行した割合」ですが、では、インフレーションとはどういった現象でしょうか。インフレーションを簡単に定義すれば、「物価水準の上昇」です。また、逆に物価水準が下落する事をデフレーションと言います。厳密にインフレ率を測るには、全ての財・サービスの価格を加重平均しなければならないのですが、それは現実的に不可能です。

 そこで、代表的な財・サービスを決め、その平均価格から計算した物価の基準値が物価水準です。物価は、需要と供給で決まりますが、その上昇は、「需要の増加」と「供給の減少」のどちらか又は両方で起こる事が一般的です。物価水準が上昇するという事は、当該貨幣1単位で買える財・サービスの量が減る事を意味するので、逆に言えば、貨幣供給量を増やす事によって物価水準が上昇する事もあります。現在は変動相場制なので、貨幣供給量がそのまま物価水準と完全に比例するわけではありませんが、物価水準に影響を与える要因の一つではあります。この物価水準の変化の割合がインフレ率であり、月毎・四半期毎・年毎など一定の期間に区切って物価の動向を比較します。デフレの場合、インフレ率はマイナスの値になります。

購買力平価説とは

 前節の説明で分かったと思いますが、インフレにおいては「貨幣1単位でどれだけの財・サービスが買えるか」という部分が重要になっています。これを「購買力」と呼ぶわけですが、「各通貨の購買力の相対的な差が為替相場を形成する」という考え方を購買力平価説ある財について安い地域から買って高い地域で売れば利益を得られるので、貿易障壁が無ければ財価格は地域に関係無く統一化されていきます。これを「一物一価の法則」の法則と言います。現実には様々な貿易障壁がありますので、一物一価の法則は成立していませんが、長期的には価格が統一化する方向に動くように働くと考えられるので、通貨の購買力の差は為替相場の変化を説明出来ると考えられます。

図1:ドル円購買力平価と実勢相場.png">

図1:ドル円購買力平価と実勢相場

 

 

主要通貨購買力平価(PPP)・その他統計(国際通貨研究所)

ビックマック指数・iPod指数

 ここまでは購買力平価と為替レートを比較してみましたが、今度はその考え方を利用した2つの価格指数を見てみます。冒頭で触れたようにビックマック指数とiPod指数です。要するにビックマック指数は「ビックマックによる購買力平価」であり、iPod指数は「iPodによる購買力平価」です。両方とも多くの国で販売されており、かつ、その品質が同等である事から購買力を簡単に把握する上で利用される指数です。米ドルと他国の購買力平価を計算する方法

ビックマック指数 = 米国のビックマック価格(米ドル建) ÷ 海外でのビックマック価格(現地通貨建)

iPod指数 = 米国のiPod価格(米ドル建) ÷ 海外でのiPod価格(現地通貨建)

 それぞれの指数は「単一の商品」で比較してあり、かつ、「消費税や補助金などが考慮されていない」ので、あくまでも参考程度にしかならないのですが、購買力平価の利点と限界を把握する上で、その実態を見る事は重要です。図2は、2011年7月時点のビックマック指数と実際のドルレートとの乖離率(左)と、2011年10月時点のiPod指数と実際のドルレートとの乖離率(右)を示しています。これによると、日本と米国のように両指数ともに乖離が殆ど無いものから、ブラジルのように両方で乖離が大きいものまで様々です。

ビックマック指数よりもiPod指数の方が遥かに精度が良い

 一国で生産して他国に輸出するという点で、ビックマックよりも製品の同質性が高い。2011年頃は「行き過ぎた円高」と言われていましたが、前節の購買力平価で見ても、ビックマック指数・iPod指数で見ても当時の為替レートは妥当という事になり、当時のレートは妥当で、現在は「円安過ぎる」と言えるかもしれません。

長期と短期の区別を

「購買力平価説は長期の為替レートを説明する理論」である事です。現在の主流派マクロ経済学では「短期では均衡から乖離する事があるが長期では均衡に近づいていく」という立場を取る事が多いです。

 理論を元に分析する場合も、実際の投資を行う場合も長期と短期の区別を付ける事が重要で、この区別が無いと投資スタンスにブレが生じたり、分析を誤ったりするかもしれません。勿論、短期の積み重ねが長期であり、完全に独立しているわけではないのですが、ある程度区別して考えた方が便利な場合が多いでしょう。

 

photo credit: Images_of_Money via photopin


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